投機的浪漫実行

diary

タイトルあんま関係ないです。

長めの日記くらいのノリで書いてます。


自分の元々の出自はソフトウェアエンジニアで、半年前に会社を辞めて法人成りし、今は合同会社の代表社員をやっています。

まずは法人化に至るまでの経緯について簡単にまとめておきます。

大学卒業後、Webアプリケーション開発者として就職し、2社目ではテックリードとかやってました。

働く傍らでオープンソース活動にハマり、自分で立ち上げたソフトウェアで 2023年度の部門別トレンド9位 に選ばれたり、同時期にY Combinatorに採択されたソフトウェアのコアメンバーをやっていたりしました。

そういった経歴を話すと技術的に優れていると思われがちですが、実際はそうでもなく、むしろ、技術に関しては同じプロジェクトのメンバーの中でも一番できなかったと思います。

もちろん技術は楽しいし研鑽を怠らないようにしていますが、それ以上にユーザーに提供するインターフェイスデザインを考えるのが楽しいし、ユーザーのサポート対応をするのも楽しいし、どうやったら認知してもらえるか、使ってもらえるかマーケティング戦略を考えるのが大好きでした。

なにより、仲間と一緒に目標に向かって進むのが本当に楽しかった。2023年は仲間にも恵まれ、自分で立ち上げたプロジェクトが大きく広がっていくのを見ることができて本当に幸せな1年でした。

また仲間と全力で物事に取り組みたい、作ったモノで人々に喜んでもらいたい。そんな思いが日に日に強くなり、2024年の2月に独立して法人化しました。

技法へのこだわりは名店たる所以になりえない

話はいきなり逸れますが、独立・法人化して良かったことの1つに、プログラミングが趣味だと言うことに抵抗がなくなったことがあります。

マイクロ法人ですが今は職業的にはいわゆる経営者というやつで、ソフトウェアエンジニア的な肩書きを自分の中で外すことができたことは、自分の中で大きな変化でした。

巷ではたまに「プロダクト志向か、技術志向か」という議論を見かけます。

個人的な意見としては、どちらか片方を選ぶ必要性を感じていません。技術は技術で楽しいし、プロダクトを作るのも楽しい。両立できるものだと思っています。

もう少し細かく言うと、個人的にプロダクトと技術は二項対立に持ち込めるほど概念的に近いものではない考えています。

広く使われるプロダクト作り(当然、どう売るかもその範疇)に技術が及ぼす影響は小さすぎますし、技術的に難易度の高い部分は普通のアプリケーション開発に結びつかないレイヤでの理論や実践が大半で、言うならば『K-POPが好きかスパイスカレーが好きか』と問うているように感じています。

それでも敢えてどちらかを選ぶとしたら、プロダクトやビジネスを優先で考えて、技術的な探究は個人的な趣味として楽しむ、という心持ちが自分には合っている気がします。

もちろん基盤となる個々の技術自体はとても奥が深いものですが、一般的なアプリケーション開発でプログラマが扱う技術はその限りではありません。もしそうであったならば、私を含め今のように誰でもソフトウェアエンジニアになれる時代は訪れなかったでしょう。

普通のアプリケーション開発におけるエンジニアリングの難しさはどちらかというと、社内外のステークホルダーとの調整やスキルや理解度の違うメンバー間でのコミュニケーションだったり、自然言語という曖昧な言語で定義された要件をプログラミング言語という形式言語に落とし込むことなど、技術とは関係のないところにある事が多い気がします。

店を開くと言うこと

無論、アプリケーションの種類によっては、例えば上場企業などユーザー数も多く抱え社会的責任を持つ企業のプロダクトの場合は、セキュリティやパフォーマンスなどの非機能要件で高難度になりますが、少なくとも普通のプロダクトに関しては、技術がボトルネックになるケースはあまりないと思います。

ボトルネックにもならないと同時に、殆どのプロダクトでは技術的優位性が売り上げに直結することもほぼありません。

では何が重要かと問われると、至極当たり前のことを言ってしまうと、人間が大事なのではないかと思います。

『起業のファイナンス』という本の中で、以下のような記述があり、個人的にとても共感しました。

もちろん、科学的真理の追求なら、誰にも理解されずとも、自分だけがわかっていればいいもしれませんし、(中略)しかし、事業であれば、事業を取り巻く多種多様な人達を納得させる力がないと、計画が達成できるとは思えません。

経営における至上命題は、営業利益を上げることです。そうでなければ、会社は潰れてしまいます。

そう言う意味で、技術者、経営者を問わず、プロダクトを作る上で考えるべきは、そのプロダクトがどれだけ人を納得させることができるか、なのかもしれません。

ところで、行きつけのお寿司屋さんの大将が、以前こんな話をしてくれました。


数年前コロナが流行った時、飲食店は営業を自粛する必要があり、当然ながらその間は魚を仕入れる機会は少なくなりました。

豊洲市場での魚の売買の元締めは東京都が行っているのですが、赤字を出したくない東京都は、漁師さんに対して売る魚の量を制限するようにしたそうです。

そうすると、当然漁師さんも生活があるわけですから、釣った魚が売れないと困るわけです。

その間に何が起こったかと言うと、他の国がより高値で魚を買ってくれるようになり、日本の魚が海外に流れるようになってしまいました。

海外の方が高値で買ってくれるわけですから、コロナが明けた後も漁師さんは豊洲で魚を売るよりも海外に売る方が得だと考えるようになり、豊洲市場への”質の良い”魚の供給は現在も減ったままだそうです。

もしもコロナ期間も国が率先して魚を買い続けていたら、その時の恩義があるわけですから、コロナが明けた後も豊洲市場に”質の良い”魚が供給されていたかもしれません。

その間に大将は何をしていたかというと、自ら漁師さんの元に赴き、盃を交わし、言い値で魚を買い続けたそうです。

その結果、コロナが明けた後も、大将の店には漁師さんから”質の良い”魚が供給され続けているそうです。それどころか、パイプのあった漁師さんのツテで、より良い魚を仕入れることができるようになったそうです。


なるほど、これは非常に本質を突いた話だと感じました。

結局のところ、人間同士の営みである以上、一番重要なのは人間関係であり、信頼関係を築くことが大事なのだと思います。

プロダクトも同様で、ユーザーに受け入れられるプロダクトを作るためには、ユーザーとの信頼関係を築くことが大事なのでしょう。技術的に優れているだとか、どんな理論に基づいているとかは、結局は作り手側の都合でしかありません。

自分で仕入れて、自分で握る

私は、あまりソフトウェアエンジニアに向いていません。

冒頭で述べた通り、私は技術も好きだけれども、企画を考えるのも好きで、サポート対応も好きだし、グロース戦略を考えるのも好きです。

降りてきた仕様を元にそれを実装すると言う仕事は、私にとってはあまり楽しくありませんでした。

自分でプロダクトを作って今までで一番嬉しかったのは、あるユーザーさんから「みんなで不具合報告や要望を出してそれを運営が解決するという流れが、みんなで作りあげてく感があってとても好きです!」というコメントをいただいたことです。

そうか、自分が作りたかったのは、みんなが主人公になれる空間だったのかもしれません。

そしてそのために、今は大きく作らないという方向に舵を切っています。

自分で言うのもなんですが、自分は伸びる施策を考えるのが少しだけ得意です。

過去には、自分のサービスに導入したある機能がXで万バズして、Yahoo!ニュースにも取り上げられたこともありました。

しかし、急速に大きくすると、ユーザーひとりひとりの声に耳を傾けることが難しくなります。グロース施策を考えるのも勿論大事ですが、今の自分はそれよりも、少しのユーザーさんで良いから、その方々に強烈に喜んでもらえるようなプロダクトを作りたいと思っています。

技術記事を書く場所を最近大手プラットフォームから自分のブログに移行した理由も、その一環です。

確かに大手プラットフォームはSEOも強く、書いた記事を多くの人に読んでもらえる可能性が高いです。そうすると、より多くの人に読んでもらう方向に力学が働き、本当に伝えたかった内容がごく僅かしか入れることができなくなります。

それよりは、多くの人には伝わらないかもしれないけれど、よりエッセンスを詰め込んで、それを強く共感してくれる少数の人に届く方が、自分にとっては価値があると思いました。

まだ次に何を作るかも決まっていない状態ですが、自分なりの哲学をしっかり持って、共感してくれるごく僅かな人たちに、強烈に喜んでもらえるようなプロダクトを作っていきたいなぁと、最近はそんなことを考えています。

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Poteboy

浪漫駆動プログラマ & 起業家 🐻‍❄️⚡️